静脈採血時の駆血帯に関する注意点

☆採血する時に注意することは、溶血と
血管内への逆流があります。

◆駆血による溶血の原因
静脈からの採血時に駆血帯を使用します
が、駆血時間が長かったり、採血時間が
長かったりすると溶血のリスクが高くなります。
駆血時間や採血時間が長くなる要因とし
ては血管が細い、硬い、脆い、出にくい
血圧が低い、栄養状態が悪い、高齢等があります

検査項目によっては駆血帯をしない場合もあります。


◆血管内へ逆流する原因
駆血帯を外すタイミングを間違えると、
採取した採血管内の血液が静脈内に逆流
するリスクがあります。
採血ホルダーを使用して採血する時は
注意が必要です。真空採血管内は陰圧に
なっているため、静脈内の血液は自然に
採血管内に注入されます。採血管内の圧
が静脈圧と同じになった時点で、血液の
注入は自然に止まります。
注意することは、駆血帯を巻いた状態の
静脈圧と、外した時の静脈圧は違います
ので、採血管を刺し込んだ状態で駆血帯
を緩めないようにします。採血管を刺し
込んだ状態で駆血帯を緩めると静脈圧の
方が採血管内の圧より低くなる場合があ
り、採血管内の血液や空気、凝固剤等が
血管内に逆流してしまう危険があります

以前は未滅菌の採血管を使用していたり
採血ホルダーを再利用していたため
セラチア菌などの感染が報告され
2004年からは採血管は滅菌済みのもの
を使うよう義務化されています。
又、採血ホルダーも原則1回のみの使用
で使い捨てが、2005年から義務化さ
れています。

シリンジ(注射器)での採血の場合は、
採血ホルダーでの採血より逆流及び感染
のリスクは低くなります。


◆溶血に関する対策
採血は1分以内に終了させるように、
駆血は2分を超えないように注意します
その為には、血管が出にくい方や血圧が
低い方などの場合は、血管を怒張する
目的で、親指を中にして手のひらを閉じ
てもらったり、温めたり、軽く叩いたりします。
それでも難しい様であれば座位ではなく
仰臥位で採血を試みます。
又、上肢で適した血管がない場合は下肢
などの血管を選択する場合もあります。

座位で採血する時は採血部位を心臓より低くします。
採血に時間がかかるようであれば、一旦
駆血帯を緩めて、再度駆血する場合も
あるようですが、逆流のリスクは高くなります。


◆血管内への逆流を最小限にする方法
採血ホルダーを使用して採血する場合は
採血管を抜いた後に駆血帯を外して、
注射針を抜くようにすると逆流のリスクはより低くなります。

●採血ホルダーでの採血方法の経緯
以前は逆流による感染防止の為に、針を
刺した後すぐに(採血管を取り付ける前
に)駆血帯をはずすよう厚生労働省から
指示されていました。当時は未滅菌の
採血管を使用していた為と採血ホルダー
を再利用していた為、感染の危険が現在
より高い状態でした。その為現在よりも
厳格に逆流防止策をとっていました。
この方法(駆血帯をはずした状態で採血)
だと血液の量が駆血時よりも少なくなる
為、必要量の血液が採取できないなどの
問題が起きました。解決策として、使い
捨ての採血ホルダーと滅菌済みの採血管
を使用し、全ての採血が終わって、最後
の採血管を取りはすしてから、駆血帯を
緩めることで、必要量の血液を採取でき
且つ逆流のリスクを最小限に抑えること
が可能であると判断されました。


◆その他の注意点
血管を怒張させる為に駆血時に手を握る
場合があります。
この時に注意することは強く握っている
時間を長くしない事です。
又、開いている手を駆血中に強く握ることも避けます。
溶血のリスクが高くなります。

採血する上肢と採血管は常に下を向いた
状態で採血します。
採取した採血管の血液が採血針に触れな
いようにする為です。重力の関係で採血
管内の血液が静脈内に流れるリスクを無くす為です。

溶血に関する対策としては上記以外にもいくつかあります。
ここでは主に駆血帯に関する対策だけをまとめてあります。

注射と穿刺 項目一覧


◇参考文献
厚生労働省HP内
医薬品・医療機器等安全性情報 
(7)真空採血管等における使用上の注意等の追加等について
www.mhlw.go.jp/houdou/2005/04/h0427-1.html
日本臨床衛生検査技師会HP内
標準採血法ガイドライン(第1版)
www.jamt.or.jp/information/official/h16/07-3.html
日本環境感染学会HP内 p
www.kankyokansen.org/new/anzenkanri205.pdf