脈拍からわかること


脈拍を通して脈拍の数とリズム(調律)
性状などがわかります。
心臓の状態や全身状態を知る重要な手がかりになります

◆脈拍数

脈拍数は年齢、性別、体格、運動、温度
などの要因で生理的に変化します。

脈拍の年齢別による正常値(基準値)目安 例
*文献により多少異なります。
脈拍数は1分間の測定値で表します。
生理的な変動がある為、安静時に測定します。
新生児 130~150 回/分
乳児 110~130 回/分
幼児 100~120 回/分
学童 80~90 回/分
成人 60~80 回/分
高齢者 50~70 回/分

成人では女性の方が少し多い傾向にあります。
運動、食事、入浴、睡眠などで生理的な変動がみられます。
運動時や食後、入浴後などは脈拍は多く
なり、睡眠時は減少します。

脈拍数の異常値 目安 例
成人の場合は通常、1分間に60回未満を
徐脈、100回以上を頻脈といいます。

◆脈拍のリズム(調律)

脈拍のリズムが規則的に拍動していることを整脈といいます。
リズムが不規則になることを不整脈といいます。
脈が遅くなったり、速くなったりを繰り
返したり、心臓の期外収縮などがあると
リズムが乱れます。
心室性期外収縮や房室ブロックなどが
あると、規則的にうっていた脈が一瞬、
触れなくなるときがあります。
これを脈拍欠損(結滞・欠滞・結代)と
呼び、リズムが乱れます。
リズムの乱れには、二段脈、三段脈などがあります。
全く不規則な脈を絶対性不整脈といいます。

不整脈は調律機能が異常な心拍の総称になります。
必ずしも心拍(脈拍)が不規則なだけ
ではなく、心拍のおこりかたの異常なものも含まれます。
広い意味で徐脈や頻脈も不整脈に含まれます。

不整脈の詳細は下記をご参照ください。
不整脈(当サイト内)

◆脈拍の性状

脈拍の性状には、大きさ(強さ)、速さ
緊張・硬さなどがあります。
脈拍の性状は回数やリズムと異なり、
触診して識別するには困難です。
循環器専門の医療従事者になると、ある
程度識別できる人もいると思いますが、
通常は性状を識別するには、脈波を測定
して、波形から判断します。

脈が強い、弱い、硬い、軟らかい、細い
などの大まかな性状は触診でも確認できます。


詳細に関しては下記をご参照ください。
脈拍の性状(当サイト内)

◆左右差・上下肢差

●左右差
上肢の場合は左右の橈骨動脈を、同時に
触診し、左右差をみます。
左右差がある場合は、左右の上腕動脈の
血圧を測定します。

下肢の場合は左右の足背動脈を、同時に
触診し、左右差をみます。
左右差がある場合は、左右の下肢の血圧を測定します。
下肢での血圧測定部位は、大腿にマンシ
ェットを巻く場合は膝窩動脈、下腿に
マンシェットを巻く場合は、後脛骨動脈
足背動脈を測定します。

●上下肢差
下肢の脈拍と上肢の脈拍の差をみます。
差がある場合は、それぞれの血圧を測定します。

続きはこちらです→ 脈拍の性状

体の表面から触れることが出来る主な動脈の拍動部位
橈骨(とうこつ)動脈、上腕動脈、
頸動脈、大腿動脈、
膝窩(しつか・しっか)動脈、
後脛骨動脈、足背動脈等があります。

心臓の拍動について
心臓は自発的な電気的刺激により収縮します。
右心房にある洞結節から電気的興奮が
はじまり、心室のプルキンエ繊維へ広がり、心室が収縮します。
心臓が周期的に収縮と拡張を繰り返し、
動脈血を全身に送り出すことを心臓の拍動といいます。

脈拍と自律神経
心臓は自律神経によって調整されています。
交感神経が優位になると、心拍数(脈拍
数)が増加し、副交感神経が優位になる
と、心拍数(脈拍数)が減少します。

血液循環
右心房→右心室→肺動脈(静脈血)
→肺の毛細血管(ガス交換)
→肺静脈(動脈血)→左心房→左心室
→大動脈→全身の動脈→毛細血管
(ガス交換)→静脈→上下大静脈
→右心室

脈波について
脈波は心臓の拍動に伴って大動脈から
末梢動脈へ伝わっていきます。
動脈内の圧や血液の容量が変化します。
圧による変化として表れる波を圧脈波、
血液の容積の変化に伴って表れる波を
容積脈波といいます。
心臓疾患や末梢動脈疾患(PAD)など
の診断に用いられます。
一般的に使用されているパルスオキシメ
ーターは、指尖容積脈波になります。



脈拍 項目一覧


◇参考文献
書籍
「人体生理学ノート」金芳堂 1982年 p86~p88
「わかって身につくバイタルサイン」学研 2013年 p40~p62 
「フィジカルアセスメント ナースに必要な診断の知識と技術」第4版 医学書院 2007 p27~p30 p82
「ナース必携最新基本手技AtoZ」EXPERT・NURSE 保存版 小学館 1994 p27~
「心電図・ナースのためのワークブック」金芳堂 1985 p66~
「新・検査マニュアル」小学館 1993  p28~
「ゼロからわかる救急・急変看護」成美堂出版 2013年 p102~
「介護職員等のための医療的ケア 喀痰吸引・経管栄養等の研修テキスト」p50 p51
「ナース必携心電図マニュアル」小学館 
「最新医学大辞典」医歯薬出版株式会社 p1223 p1387 p685

インターネット
ウィキペディアHP
http://ja.wikipedia.org/wiki/拍動
http://ja.wikipedia.org/wiki/パルスオキシメーター
http://ja.wikipedia.org/wiki/心拍数
http://ja.wikipedia.org/wiki/不整脈
http://ja.wikipedia.org/wiki/期外収縮
http://ja.wikipedia.org/wiki/頻脈
http://ja.wikipedia.org/wiki/徐脈
http://ja.wikipedia.org/wiki/心房細動
http://ja.wikipedia.org/wiki/房室ブロック