胃瘻に注入される経腸栄養剤

胃瘻だけではなく経腸栄養法(経鼻胃管
栄養法、空腸瘻栄養法等)で注入される
栄養剤を経腸栄養剤といいます。
経腸栄養剤の種類には、自然食品流動食
半消化態栄養剤、消化態栄養剤、成分栄
養剤、特殊な組成の栄養剤等があります


◆自然食品流動食
自然(天然)食品流動食には普通流動食
ミキサー食、天然濃厚流動食などがあります。

●利点
・栄養価が高い
・経済的
・生理的な消化吸収が行われる
・消化機能が保たれる

●欠点
・チューブを通過しにくい
・調製に時間がかかる、
・消化吸収機能が低下している場合は適さない
・消化吸収が正常に働かないと下痢をし易い
・残渣が多い


◆半消化態栄養剤
高エネルギー、高蛋白の栄養剤です。
分解されていないタンパク質とポリペプ
チドを含む為、分解(消化)する必要があります。
高エネルギー、高蛋白の栄養剤です。
消化器系に問題がない場合に選択されます。

商品名(医薬品)例
クリニミール、ラコール、アミノレバンEN など

●利点
・バランスのとれた栄養剤
・味は他の栄養剤に比べ良い

●欠点
残渣は少ないが、消化吸収の機能が低下
している場合は適さない


◆消化態栄養剤
高エネルギー、アミノ酸を多く含む。
低分子ペプチドとアミノ酸を含むため、
消化吸収が容易。
糖質はデキストリン(多糖類)、二糖類など。
脂質は少量。

商品名(医薬品)例
ツインライン、エンテルード など

●利点
・半消化態栄養剤より消化吸収が容易
・残渣を殆ど残さない
・粘度が低いため管が詰まりにくい
   
●欠点
・成分栄養剤より少し消化を必要とする
・脂肪分が少ない為他で補う必要がある
・生理的な消化吸収ではない為、腸管の
機能や免疫が低下しやすい
・味や香りがあまりよくない


◆成分栄養剤
体に必要な成分を殆ど含んでいる。
タンパク質源ではアミノ酸のみを含む。
糖質はデキストリン。
脂質は少ない。
他の栄養剤より浸透圧が高い。

商品名(医薬品)例
エレンタール、ヘパンED、アミノレバンEN など

●利点
・消化を必要としない
・すべての栄養成分が吸収される
・残渣がほとんどない

●欠点
・脂肪分が少ない為他で補う必要がある
・他の栄養剤より浸透圧が高い為、下痢をしやすい


◆病態別栄養剤(疾患別栄養剤、特殊な組成の栄養製剤)
病態にあった成分が配合されています。
肝不全、腎機能低下、呼吸機能低下、
糖尿病などがある場合は、それぞれに
合った栄養剤が必要になります。

●肝疾患用の栄養剤
肝硬変や肝不全などの疾患に処方されることが多い。
アミノ酸のバランスがとれるような栄養剤。

商品名例
ヘパンED、アミノレバンENなど。

●腎疾患用の栄養剤
腎機能障害や腎不全などに使用される栄養剤。
蛋白質の排泄障害や電解質の調節障害が
あるため低蛋白でカリウム、ナトリウム
などを少なくしています。
タンパク質を制限、低ナトリウム、
低カリウム、低リンの栄養剤が中心。

商品名例
リーナレン レナウェル など

●呼吸器疾患用の栄養剤
呼吸機能低下、慢性閉塞性肺疾患などに
使用されることが多い。
二酸化炭素の産生を抑える為に、エネル
ギー源を糖質より脂肪の割合を多くしています。
安静時でもエネルギーの消費量が高いた
め十分なカロリーを補充しなければなり
ません。
糖質を減らして脂肪を多くしています。
呼吸機能が低下すると二酸化炭素が増加
するため、炭水化物(糖質)を減らしています。
*糖質が代謝される過程で、二酸化炭素がつくられるため。

商品名例
プルモケア など

●糖尿病用(高血糖用)の栄養剤
炭水化物(糖質)を抑え、脂肪が多く含まれています。    
脂質はオレイン酸を多く含む。
血糖上昇抑制の為、食物繊維が含まれています。

商品名例
グルセルナ、インスロー など

●侵襲用の栄養剤
手術後や、外傷、熱傷などの時に使用されます。
半消化態栄養剤や病態別栄養剤、免疫調
整栄養剤等が使用されます。

商品名例
オキシーパ、明治メイン(MEIN)など

*免疫調整栄養剤は体内での炎症反応等を
抑える成分などを添加又は強化した栄養剤のこと。


◆固形化栄養剤について
栄養剤を固形化することにより瘻孔周囲
からの漏れを防ぐことができます。
寒天などで固めたものです。
固形化経腸栄養剤は、固形化剤(ゲル化
剤)で固形化したもので流動性はなく、
形が一定に保たれているもの。
固形化した食品には、プリン、ゼリー、
豆腐などがあります。
経腸栄養剤として使用する時はゲル化剤
を栄養剤や流動食に加えて固形化します

*頻回の下痢に対しては固形化したものを
使用すると改善されることも。


◆半固形経腸栄養剤
半固形経腸栄養剤は流動性はないが形がないもの。
形が固形化していない又は流動性があっ
ても濃度や粘度が高い栄養剤のこと。
温度や時間等の条件によって形状が変化
する栄養剤。
ゾル化、ゲル化、増粘化などの栄養剤。
ゲル化剤で粘度を高めた経腸栄養剤や、
増粘剤でとろみをつけたトロミ食、
濃度の高いミキサー食などがあります。

続きはこちらです→ 胃瘻を造設する方法 概要



胃瘻 項目一覧



◇参考文献
書籍
「PEG(胃瘻)栄養・適切な栄養管理を行うために」改訂版フジメディカル出版 2009
「胃瘻PEG合併症の看護と固形化栄養の実践」日総研 2007
最新医学大辞典(医歯薬出版株式会社)
広辞苑
ポケット看護辞典(廣川書店)

インターネット
ウィキペディア
ja.wikipedia.org/wiki/胃瘻
ja.wikipedia.org/wiki/食事療法
ja.wikipedia.org/wiki/流動食
PEGドクターネットワーク
www.peg.or.jp/
経皮内視鏡的胃瘻造設(PEG)業績紹介ページ
http://peg.fukiage-clinic.com/
日本流動食協会
www.ryudoshoku.org/