◆心臓内の電気の流れ
心筋の興奮によって発生する電気の流れ
を記録するためには、マイナス電極と
プラス電極が必要になります。
心臓を2つの電極で挟むことで、電気の
流れを記録することが出来ます。
通常、心臓の位置は中央よりやや左側に
位置し、下方にある心尖部(心臓の先端
部)が左側に寄って斜め向きになっています。
右心房の上部に位置する洞結節から発生
した電気的刺激は、心臓のほぼ中央に
ある房室結節を介して心尖部(心臓の先
端部)の方へ伝わります。
心臓の電気的刺激は右斜め上から左斜め
下の方へ向かって伝わっています。
◆心電図の波形の向き
双極誘導の場合
電気はマイナス電極からプラス電極へ流れます。
心臓の電気的刺激と同じ流れの方向に
電極をつければ波形は、上向きになります。
心臓内の電気の流れに対して、その上方
にマイナス電極、下方にプラス電極、
即ち心臓の右斜め上の方にマイナス電極
心臓の左斜め下の方にプラス電極を取り
付けた場合は、心電図の振れは上向きになります。
例えば、第Ⅱ誘導(双極誘導)では、
心臓の電気的刺激とほぼ同じ流れの方向
になっています。
右手がマイナス電極、左足がプラス電極
になっている為、心電図の振れは上向きになります。
反対に心臓の右斜め上の方にプラス電極
心臓の左斜め下の方にマイナス電極を
取り付けた場合は、心電図の振れは下向きになります。
単極誘導の場合
単極誘導の場合は、心臓内の電気が向か
っている方向に位置している電極は
上向きに振れ、遠ざかっている方向に
位置している電極は下向きに振れます。
電極から心臓を見ていると仮定します。
電気が電極の方へ向かってくる時は上向
きの波、遠ざかるとき(電極と反対の方
向)は下向きの波形になります。
例えば、aVFは左足に電極をつけている
ため、心臓内の電気の流れを迎える形に
なり、心電図の振れは上向きになります
反対に、aVRは右手に電極をつけて
いるため、心臓内の電気の流れを見送る
形になり、心電図の振れは下向きになります。
四肢の電極は、実際は両手足について
いますが、心筋の興奮で発生した電気の
流れは、体表面のどの部分にも分布して
います。その為、心臓から遠い手首や
足首からでも心筋の電気的変化を知ること
が出来ます。
右手は心臓の右上、左手は心臓の左上、
左足は心臓の下に電極を置いた状態とほぼ
同じになります。
心臓と体表面(皮膚)との間には肺や縦隔
心外膜などがある為、心臓の各細胞の活動
電位を直接表しているものではありません
が、体表面から記録する心電図の知識は
心臓の機能を把握するうえでとても有用になります。
心電図の誘導
心電図の誘導は、心筋の活動電位の変化
をみる視点を表し、12誘導の場合は
12の視点から心臓を観察することになります。
心臓を立体的にとらえることで心臓機能
を把握することになります。
体表面に取り付ける電極の意味
電極は心筋の電位やその変化を導出する
ための誘導電極になります。
例えば胸部誘導の場合は、V5やV6に
置かれた電極は、左室の心筋の電位の
変化を表しています。
活動電位とは?
筋肉・神経などの細胞・組織が興奮した
時に発生する電位の変化。
心筋の活動電位
心筋の細胞の表面に電気を流すと、細胞
が興奮して収縮します。
それまで一定のマイナスの電位を示して
いた膜電位(静止膜電位)が上昇します。
興奮することで膜電位が上昇することを
脱分極といいます。
電気的刺激が起き興奮すると、膜電位は
上昇し(脱分極)やがて元の静止膜電位
(マイナス電位)に戻ります(再分極)
活動電位とは、脱分極の開始から再分極
の終わりまでの電位の変化になります。
心臓の各部位により心筋の活動電位は
異なります。
体表面から記録する心電図は、各部位の
心筋の活動電位を、ひとまとめに記録しています。
静止膜電位について
細胞は細胞膜で被われています。
細胞膜を挟んで、細胞内と細胞外の電位
の差を膜電位といいます。
細胞内と細胞外のイオンの分布には差が
ある為、電位の差が生じています。
通常、静止状態の膜電位は細胞内が
細胞外に対して負の電位にあります。
細胞内はカリウムイオン(K+)が多く
細胞外はナトリウムイオン(Na+)が
多く存在しています。
様々な作用で絶えず細胞内外のイオンの
移動は行われています。
静止膜電位とは、絶えず移動している
イオンの動きが見かけ上、動かなくなる
条件をもたらす膜電位のことです。
見かけ上(実際はイオンの流出入は続い
いる)イオンの移動がなく、膜電位が
安定した状態に見える条件をもたらす
膜電位を静止膜電位といいます。
静止膜電位を作っているのが主に、
ナトリウム・カリウムポンプと
カリウム漏洩チャネルになります。
イオンは正又は負の電気をもつ原子または原子団。
電位とは?
電場内の1点に、ある基準の点から
単位正電気量を運ぶのに必要な仕事。
(広辞苑より抜粋)
位置エネルギーとほぼ同じ概念。
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