◆Q波
QRS群の始点からすぐに現れる下向き
の波(aVR誘導では上向き)です。
心室中隔の興奮を表しています。
誘導部位によりQ波は描かれない場合もあります。
II・III・aVL・aVF・V5・V6 誘導で
みられることもある様です。
幅(時間)は0.04秒未満で、
高さ(振幅)は、R波の高さの
1/4未満が正常です。
◆R波
R波はQRS群で現れる上向きの波
(aVR誘導では下向き)です。
両心室の興奮の過程を表しています。
心室内膜から外膜迄の活動電位の変化。
正常な心臓ではP波と1:1の割合で
出現します。
通常全ての誘導で見られます。
◆S波
S波はR波の後に現れる下向きの波。
心室の興奮(脱分極)の終了を表しています。
誘導部位により描かれない場合もあります
◆ST部分
心室興奮極期。
S波の終点からT波の始点までの部分になります。
下向きのS波が水平(基線)に変わる
部分からT波が始まるまでの部分。
心室の興奮(脱分極)が終了し、再分極
が始まるまでの時間になります。
心室全体が興奮しきっている状態で、
この時期は電位差がない為、原則として
基線と同じレベルになります。
基線よりも上方にある場合を上昇、
下方にある場合を低下と呼びます。
多少の上下があったとしても、0.05mV以下。
誘導部位によっては正常でもSTが上昇
しているパターンもあります。
STの幅(時間)の正常値は
0.10~0.15秒
参考文献により数値は多少異なります。
◆T波
心室興奮回復期。
心室の興奮が終わって興奮がさめていく
過程(再分極)を表しています。
aVR誘導では下向き(陰性)、その他の
誘導では上向き(陽性)が正常ですが、
Ⅲ、V1、V2では正常でも低い陰性が
出現することもあります。
正常な振幅(フレの高さ)目安例
1.2mV未満でR波の振幅の1/10以上
胸部誘導では1mv以下でR波の振幅の1/10以上
四肢誘導では0.5mv以下でR波の振幅の1/10以上
1.2mV以上ある場合は高カリウム血症が疑われます。
正常な幅(時間)目安
0.10~0.25秒
参考文献により数値は多少異なります。
◆U波
T波に続く小さな波。
T波より通常は低い。
U波は他の波の様に、成り立ちがはっき
りと解明されていません。
aVR誘導では下向き(陰性)、その他の
誘導では上向き(陽性)が正常。
正常でも見られないこともあります。
aVR誘導以外での陰性U波が認められる
場合は心筋虚血や心肥大などが疑われます。
正常な振幅と幅 目安例
振幅(高さ)
0.05mV(四肢誘導)
0.1mV(胸部誘導)
幅(時間)
0.16~0.25秒
☆参考文献により数値は多少異なります。
異常Q波について
Q波の幅が0.04秒以上、高さがR波の
1/4以上の波を異常Q波といいます。
正常な心臓でも異常Q波はⅢ・aVL・
aVR・V1・V2(?)誘導で単独に見られる
場合もあるようです。
それ以外の誘導で見られる場合は、心筋
壊死(心筋梗塞等)が疑われます。
心臓の電気軸や回転等によっては、正常
な心臓でも異常な波形が描かれる場合もあります。
T波の表現方法
陽性、陰性、二相性、尖鋭、平底、平坦
テント状(陽性に増高)冠性T波(左右対称の陰性T波)
R波の1/10未満を平坦、1.2mV以上を増高
心臓の刺激伝導系
洞結節から電気的刺激が起こると心房へ
伝わり心房筋が興奮。
その後、房室結節に刺激が伝わり、
ヒス束、左脚と右脚、プルキンエ線維の
順に刺激が伝わり、心室が収縮します。
ヒス束は心室中隔に下降してから左脚と
右脚に分かれます。
心室の興奮は心室中隔から始まります。
Q波の始まりが、心室中隔の興奮の始まりになります。
その後左脚と右脚、プルキンエ線維へと
伝わり心室が興奮します。
R波が心室の興奮になります。
心電図を記録する速さと感度
記録用紙の標準的なスピードは1秒間に25㎜です。
横の目盛が時間を表しており一番小さい
目盛 1mm は 0.04秒になります。
電位の大きさ(上下方向のフレ)は、
1mV=10mm が標準になっています。
縦の目盛が電圧を表しており一番小さい
目盛 1mm は 0.1mVになります。
波形の向きの表現方法
上向きのフレを陽性
下向きのフレを陰性又は逆転
フレが正常よりも低い時は平低
陽性と陰性の両方が存在する時は二相性
峰が2つに分裂している場合は二峰性
尖った波を尖鋭(QRS波以外)
Q波、R波、S波は先の尖った波が正常波形になります。
その他のP波、T波、U波はなだらかな波
が正常波形になります。
陽性、陰性の基準は、基線より上か下かになります。
基線は通常、P波の始点から次のP波の
始点を結んだ線になります。
続きはこちらです→ 主な波形の基準値