痰などの吸引について


  • 痰などの吸引について項目一覧
    痰などの吸引概要
    高齢者の痰などの吸引について
    吸引が必要な場合
    家庭での痰などの吸引
    大切なこと


  • 痰などの吸引概要
    ◆痰などの吸引とは?
    口腔内、のど(咽頭、喉頭)、
    鼻腔、気管、気管支などに
    溜まっている分泌物を吸引器等
    を利用して体外に出すことです。
    痰などの分泌物を直接吸引
    して、体外への排出を助けます。


    ◆痰などが貯留した場合の弊害
    痰などが気道内(口、咽頭、
    喉頭、気管、気管支等)に
    貯留していると、呼吸困難
    や窒息の原因になります。
    又肺炎などの感染症のリスクも高くなります。
    痰などの分泌物や誤嚥等により
    肺に入ったものが貯留してしま
    うと、細菌などを増殖させ炎症
    を引き起こす危険が高くなります。
    又、窒息や呼吸困難などのリスクも高まります。
    その為、自力で痰等を出せない
    方、困難な方には、外からの
    力をかりて痰などを気道から出す必要があります。


    ◆痰などが貯留しやすいケース
    体力の低下、加齢による各機能
    の反射の低下、意識レベルの
    低下、安静が必要な病態、手術
    直後、全身麻酔時、麻痺のある
    場合、痰の多い疾患(気管支
    拡張症や肺化膿症など)、
    嚥下障害、寝たきり、気管切開
    をされている方、気管内挿管を
    されている方、など様々なケースがあります。
    嚥下障害等で、唾液等を上手く
    飲み込めずに誤嚥を繰り返す場合もあります。
    健康な人の場合は、痰や唾液等
    の分泌物は無意識のうちに呑み
    込んだり、咳払いなどで気道外
    へ出すことが出来ます。その為
    気道内にそのまま貯留することは通常はありません。
    体力や各機能の低下などで呑み
    込むことが困難だったり、咳や
    咳払いが困難な場合は気道内に貯留してしまいます。
    その為定期的に又は痰などが絡
    んだ音がした場合は、体外へ出さなければいけません。
    痰などが貯留する部位は、
    鼻腔、口腔、咽喉頭、気管、気管支内などです。



  • 高齢者の痰などの吸引について
    高齢者の介護で特に注意しなけ
    ればならない介助の一つに
    「痰の吸引」があります。
    自分の力で痰が出せない方に
    とっては、命にかかわる問題です。
    又、痰だけではなく、誤嚥など
    により異物が気管に入った場合
    は、少々の水や食物などでも
    窒息や肺炎などの危険を伴うことにもなります。
    普通の健康な成人でも少量の
    水を誤嚥しただけでも、結構苦しいものです。

    気管や気管支などに異物が
    入ると、体の防御反応の一つ
    として、異物を出そうとして咳が出ます。
    咳をすることにより痰や異物が
    出やすくなります。
    高齢者になると体力の衰えや、
    各機能の反射の衰えで、
    体の自然な防御反応が鈍くなります。
    又、咳をすること自体、体力がいります。
    体力のない高齢者の場合は、
    自力で痰などを出すことはさらに困難になります。

    *年齢に関係なく体が衰弱して
    いる場合は、自力では痰を出す
    のは困難になります。

    ◆メモ◇~~~~~
    健康な人との違いは?
    例えば、健康な人が風邪を
    ひいた場合は、自力で痰を出す
    ことができますので、呼吸困難
    を起こすことは通常ありません。
    自力で痰を出せない方が風邪を
    ひくと、痰の量が多くなるため
    呼吸困難に陥る危険性や肺炎に
    罹患する可能性が高くなります。
    健康な人が風邪で熱が出た場合
    は、休養や栄養、睡眠等を十分
    とれば自然に治癒する場合が殆どです。
    自力で痰を出せない方はも
    ともと抵抗力が低下している為
    肺炎などの感染症を併発する可能性が高くなります。
    ◇◆◇◆~~~~~



  • 吸引が必要な場合
    吸引する前に、痰を出しやすく
    する方法がいくつかあります。
    それらの方法を試しても、なか
    なか排出できなければ吸引器等
    を利用することになります。
    自力で痰などを出すことが困難
    な方には、排出を助ける方法がいくつかあります。
    吸引器を使用せずに排出を
    助ける方法としては、
    タッピング(カッピング)、
    体位交換、体位ドレナージ
    バイブレーション、ネブライザ
    ー(吸入器)の使用、水分補給
    うがい、加湿、スクイージング
    ハフィングなどがあります。
    *詳細は下記をご参照ください(当サイト内)
    痰を出しやすくする方法

    上記の方法でも痰などを出せない場合の方法が吸引になります。
    吸引器などを使って痰などを直接吸引して、体外へ出すことが必要になります。



  • 家庭での痰などの吸引
    痰の吸引といっても、必要とさ
    れる方々の状態は様々です。
    気管カニューレを挿入している
    方、人工呼吸器を装着している
    方、酸素吸入中の方等いろいろあります。
    又狭心症や高血圧症、糖尿病
    慢性腎炎、脳梗塞、気管支拡
    張症、慢性気管支炎など疾患も様々です。
    疾患に伴い麻痺のある方、意識
    レベルの低下した方、中心静脈
    栄養や経管栄養(胃瘻や経鼻
    カテーテル等)を受けている方
    等把握しなければならないこと
    がたくさんあります。
    病院などでは看護師等の専門家
    がいますが、家庭では主に家族
    の方や介護福祉士やホームヘル
    パーの方が介護することになります。

    痰の吸引は訪問看護師などの指導
    を受けてから、実践することになります。
    痰の吸引に必要な技術的な指導
    から、医療機器の取扱い方法、
    消毒や清潔の保持の方法など、
    知っておかなければならないことがいろいろあります。

    *家庭での痰などの吸引の実践については下記をご参照ください。
    (当サイト内)
    口腔内吸引
    気管カニューレからの吸引
    口腔及び鼻腔からの気管内吸引



  • 大切なこと
    高齢者の場合は微熱でも肺炎等
    に罹っている場合もあります。
    37度台でも食欲低下、顔色・
    口唇色の蒼白、尿量の減少等が
    見られた場合は肺炎、腎炎等の
    可能性も高くなります。

    いつもより痰の量が多かった
    り、色の変化が見られた場合は
    体温を測定したり、食欲の有無
    や顔色などの観察、尿量のチェ
    ック、呼吸回数、脈拍、血圧等
    の測定をして異常の早期発見に
    努めることが大切になります。

    自力で痰を出すことが困難な方
    にとって痰の吸引は、毎日欠す
    ことが出来ない介護です。
    同時に呼吸状態や痰の観察を
    する機会にもなります。
    異常を早期に発見する為には
    「普段の状態」を把握して
    おくことが、とても大切になります。

    *痰の観察に関する詳細は下記をご参照ください。
    (当サイト内)
     痰の観察

    高齢者の場合は感染による肺炎
    以外に、誤嚥で肺炎を惹き起こ
    す場合が多いため注意が必要です。
    *嚥下性肺炎についての詳細は下記をご参照ください。
    (当サイト内)
     嚥下性肺炎


◇参考文献
書籍
「ロールプレイで学ぶ 呼吸ケア・呼吸管理のキーポイント」メディカ出版
「写真でわかる基礎看護技術① 看護技術を基礎から理解!」 インターメディカ 
「医学大辞典」
「家庭医学大百科」
「広辞苑」

インターネット
厚生労働省サイト内
2.喀痰の吸引
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/
kaigosyokuin/dl/text_03.pdf