褥瘡

  • 褥瘡(床ずれ) 項目一覧
    褥瘡(床ずれ)の概要
    褥瘡が出来やすい部位(好発部位)
    褥瘡予防
    昔と今と違うところは?


  • 褥瘡(床ずれ)の概要
    ◆褥瘡(床ずれと)は?
    皮膚に流れている血管は細い為
    圧迫されると皮膚の組織(表皮
    真皮、皮下組織)に酸素や
    栄養などが回らなくなります。
    一時的に圧迫された場合はすぐ
    流れは回復しますが長時間圧迫
    されますと血管が潰れるようです。
    圧迫がとれても血管が潰れてし
    まっていては血液は組織迄届きません。
    そうすると組織は酸素も栄養も
    回らず死んでしまうことになります。
    こうした圧迫などによる血流の
    低下や停止で引き起こされる損傷を褥瘡といいます。
    圧迫だけではなく皮膚のずれや
    摩擦などの要因が加わると血流
    がさらに阻害されるリスクが高くなります。


    ◆褥瘡(床ずれ)の原因
    ●長時間の圧迫
    ●圧迫やずれ、摩擦などを頻回に起こす
    ●栄養状態が悪い
    年齢に関係なく栄養状態が悪い
    と、皮膚の艶やはりがなくなり
    皮下脂肪や筋肉が落ちてきます。
    皮膚自体の抵抗力も低下してきます。
    皮下組織は主に脂肪細胞から出来ています。

    ●皮膚が清潔でない、浸潤している
    特に尿や便などで汚染された
    皮膚を放っておくと、表皮が弱
    くなり少しの摩擦やズレ等でも
    損傷するリスクが高くなります。

    ●麻痺がある
    麻痺がある部分は筋肉も落ちて
    健康な皮膚よりも抵抗力が弱くなっています。
    痛みの感覚が鈍くなったり無く
    なったりすると発見が遅れる危険があります。

    ●高齢である
    加齢とともに皮下脂肪や筋肉も
    おち、皮膚の艶やはりが低下してきます。
    血管自体も脆くなってくるため
    少しの圧迫や摩擦、ズレなどに
    対する抵抗力も弱くなってきます。
    感覚も徐々に低下する為、発見が遅れることもあります。

    ●皮膚の異常(やけどや湿疹、傷などがある)
    健康な皮膚より抵抗力が弱い状態。

    ●貧血がある
    酸素を運ぶ赤血球が減少してい
    ると皮膚や筋肉などの状態も良くありません。

    原因は一つだけではなく、複合していることが殆どです。


    ◆圧迫・摩擦・ズレの原因
    ●長時間同じ姿勢でいる
    一般的には座っている状態で
    30分、仰向けに寝ている場合
    は2時間といわれています。
    自力では体を動かすことが困難な状態の時。

    ●重たい寝具・湯たんぽなどが同じ部位にずっと触れている
    湯たんぽは低温やけどの原因に
    もなりますが、硬い物が長時間
    同じ箇所に触れていると、血行
    障害を起こしやすくなります。

    ●シーツのしわ・オムツの圧迫など
    圧迫が均一でないため、長時間
    同じ部分にだけ負担がかかってしまいます。
    圧迫だけではなく、摩擦の原因にもなります。

    ●無理な姿勢は、皮膚のずれを生じやすい
    例えば下半身に麻痺のある方が
    椅子に浅く腰かけた場合は徐々
    に体がズレてきます。その時
    皮膚自体もズレてしまいます。
    又摩擦も生じやすくなります。

    ●体動時の摩擦やズレ
    体を移動させるときに持ち上げ
    ないでずらしてしまうと摩擦や
    ズレが生じやすいです。
    例えば仰臥位(仰向け)のまま
    横に移動させる時に、きちんと
    体を浮かしてから移動させる様
    にしないとお尻や背骨、肩等の
    骨の突き出ている部分に摩擦や
    ずれを起こしてしまいます。



  • 褥瘡が出来やすい部位(好発部位)
    一般的には、骨が突き出ている
    部位が好発部位です。
    骨の突き出ている部分は、皮下
    組織や筋肉などが少ないことと
    突き出ている部分に集中して圧力がかかるためです。
    圧迫などの状態が長時間又は何回
    も続いた場合は、どの部位にも出来る可能性はあります。

    ◆仰臥位時の好発部位
    仙骨部(せんこつぶ)
    お尻の中央の骨が突き出た部分
    *一番出来やすい部分が仙骨部になります。

    踵骨部(しょうこつぶ)
    かかとの部分で主に外側が圧迫されやすい。

    後頭部 
    皮下組織や筋肉が少ないため血行障害が起きやすい。
    頭は重たいです。

    肩甲骨部
    背部の両肩の突き出た部分

    肋骨角部
    肋骨のカーブしている部分

    脊柱(背骨)
    胸椎や腰椎の突き出た部分

    肘部
    皮下組織や筋肉が少ないため、
    血行障害を起こしやすい。


    ◆側臥位時の好発部位
    腸骨部 
    骨盤上部(左右に突き出た部分)

    大転子部 
    太股の骨(股関節の部分)

    上腕骨上部(肩峰部) 
    肩の突き出た部分

    膝蓋骨部
    膝の側面に出来やすい

    外踝部 
    外側のくるぶし

    内踝部
    内側のくるぶし

    耳介部 
    特に耳の外側の部分が出来やすい

    肘部
    肘の外側


    ◆座位(坐位)時の好発部位 
    坐骨部
    座ったときに椅子と接する左右の部分

    尾骨部
    肛門の後ろ側の部分

    肘部
    車椅子などに座る時は肘掛けの台で圧迫されやすい


    ◆その他の部位
    恥骨部 
    布団の重さやオムツなどの圧迫で生じる場合もあります。

    鼻翼部・頬部など
    栄養チューブや鼻腔カニューレ
    (酸素チューブ)などが挿入
    されている場合は、チューブに
    よる圧迫で生じる場合もあります。



  • 褥瘡予防
    褥瘡を予防する為には
    圧迫などの軽減・除去や栄養
    状態を整える、皮膚の清潔
    血行を良くする等があります。

    ◆圧迫などの軽減・除去
    同じ箇所に長時間圧力がかから
    ない様にする為には体位を変えることが必要です。

    ●体位交換の方法
    *寝たきりの方の体位交換の方法をまとめています。

    夜間
    2時間毎の体位交換:例
    右(左)横向き⇒仰向け
    ⇒左(右)横向き
    ⇒仰向け 
    状態によっては横向きにする角度
    を変えてみたり、間隔をもっと
    短くしてなるべく回数を多くします。

    昼間
    座位が可能であれば体を起こす
    起こすときは必ず両膝も曲げて
    ずれないようにします。
    寝ている時よりもお尻に体重が
    かかるので角度は30度までで
    時間は30分ほどで元に戻す。
    2時間おきの体位交換。                    
    ★体を動かす時は必ず体を浮かしてから移動します。
    引きずらないようにすることが大切です。
    ★シーツや寝巻きにシワを作らないように注意します。

    ●圧力を軽減する方法
    クッション、枕、マットなどを
    利用して、圧力を分散します。
    圧力を分散する寝具類には
    エアーマット、ウォーターマット
    体圧分散マットレス、ムートン製
    のシーツ、抱き枕 などあります。
    床ずれ防止用の寝具類がいろいろ販売されています。

    エアーマットなどを利用すると
    体位変換の間隔を長くすることも
    出来るので、介護者の負担も軽く
    なりますがエアーを入れすぎると
    逆果になることもあります。
    体が底につかない程度にエアーを調節します。

    安易な円座の使用はかえって血行
    障害を引き起こしたり動きが制限
    されたり皮膚の摩擦を引き起こし
    たりすることもありますので注意が必要です。

    介護用品を利用する場合はお近く
    の市役所や在宅介護支援センター
    などで情報を提供してもらえると思います。
    介護保険で介護サービスを受けて
    いる方はレンタルできる介護用
    品もあります。まずは、担当の
    ケアマネジャーなどにご相談ください。


    ◆栄養状態を整える
    *高齢の方の食事の摂り方をまとめています。

    栄養状態を良好に保つには、
    ただお腹に入れば良いという
    ものではなく、消化・吸収を
    良くすることも大事です。

    ●消化・吸収を考慮した食事の工夫
    唾液や消化液などの分泌量が
    減少してくる為、消化・吸収を
    考慮した食事が必要です。

    対策
    消化・吸収を良くするには、
    食物の形態が大切です。
    細かく切る、やわらかく煮る
    魚は身をほぐしたり、すり身に
    する、肉はひき肉にするなど。
    ★その時の個人の状態に合わせて食物の形態を変えてみましょう。

    流動食
    重湯、ジュース、牛乳、スープ
    など固形物がないもの。 

    軟食
    お粥(三分・五分・七分・全粥
    など)、歯茎でつぶせる煮物、
    豆腐、軟らかく茹でた野菜等。

    ミキサー食
    軟食をミキサーにかけたもの。

    刻み食
    固形食を食べやすい形に刻んだもの。

    とろみ食
    片栗粉やくず粉などでとろみを
    つけたり、ゼラチンや寒天などにする。

    ●むせない様に注意する
    物を飲み込む反射が低下して
    きている為、むせない様に注意します。

    対策:例
    ゼラチン状の食べ物や片栗粉等
    でとろみをつけるなど。

    *注意
    水物はむせやすいので注意する。
    参照
    誤嚥について(当サイト内)

    ●塩分の取りすぎに注意!
    味覚がやや鈍ってくるので濃い
    味付けになりがちです。

    対策:例
    レモン・酢・ゆずなどの酸味を利用する。
    かつお節、シイタケ、昆布等の
    自然のだしを利用する。

    ●脂質、蛋白質、鉄、カルシウム、食物繊維などが不足しやすい
    対策:例
    各栄養素の吸収率を良くする為
    に魚・卵・乳製品・大豆類
    イモ類・海藻類などをなるべく
    一緒にとるようにする。
    新鮮な物、旬なものを選ぶ。
    1日30品目を目標に!が推奨されています。

    ●市販の物を利用
    栄養の管理は介護する人にとっ
    ては負担がかかる場合も多い為
    高齢者用のバランスのとれた
    市販の流動食や介護食等を利用
    されるのもいいと思います。

    ★食事をする雰囲気も大切です。
    消化吸収を良くする一助となる
    のが「楽しく食べる」 ことです。
    その為にはまずは本人の好きな
    食べ物を選ぶことも必要です。
    食べたい時に食べたいものを
    少量ずつ数回に分けて摂るのも一つの方法です。


    ◆皮膚の清潔
    ●観察
    尿や便失禁がある方はこまめに
    観察することが必要です。
    特に利尿剤や下剤等を服用した
    時は注意します。
    食後や運動後(リハビリなど)
    も排便している可能性が高いです。
    汗をかいた後も観察が必要です。

    ●皮膚の清拭
    なるべく擦らない様にかるく
    押えるようにして拭きます。
    付着物がある場合はティッシュ
    などで軽く取り除きます。
    少し熱めのお湯で軽く絞った
    タオルなどで拭きます。
    市販の使い捨ての清拭タオル等
    を利用されてもいいと思います。
    汚れが取れない場合は、無理に
    とらずに微温湯で洗い流します。

    使い捨ての注射器があれば処置も
    しやすいですが、なければ台所の
    使い終わった洗剤の容器や霧吹き
    などを活用して洗い流してもいいと思います。
    可能であれば、坐浴が理想。
    きれいにした後は、乾いた清潔な
    ガーゼタオルなどで軽く押えて
    水分をとり、乾燥させます。
    皮膚に異常(発赤や傷等が)が
    ないか調べた後に新しいオムツをします。
    寝たきりの方の場合は、テープ式
    オムツやフラット式オムツを利用
    している場合が多いと思います。
    フラット式だけの使用の場合はおむつカバーもします。
    又テープ式の上からさらにおむつ
    カバーするケースもあります。
    その時の状態でオムツのあて方も
    違いますが、要はきつくしめないことです。
    又時々緩めたりすることも必要です。


    ◆血行を良くする
    ●好発部位やその周辺を温める
    ・やや熱めのお湯で絞ったタオルなどを軽くあてて温める。
    ・日光に当てる。
    ・赤外線をあてる など。

    ●入浴、シャワー浴、足浴など
    全身浴や半身浴などで体全体を
    温め、血行を促進させます。 

    入浴が出来ない場合は足浴、
    手浴、座浴などの部分浴で血行を良くします。

    体力が消耗したり、入浴が嫌な
    場合はシャワーを浴びるだけ
    でも血行を促進して気分も良くなります。
    入浴よりは温まりませんがシャ
    ワーの水圧の効果で血行がよくなります。

    ★摩擦や筋肉のずれなどが床ずれ
    の原因にもなるため、マッサージは避けます。



  • 昔と今と違うところは?
    ●円座の使用とマッサージ
    以前は仙骨部などの褥創予防や
    悪化防止に円座は必須アイテムでした。
    研究が進むにつれて皮膚のずれ
    が起こりやすくなったり、肌に
    触れている円座自体が血液の流
    れを悪くすることかが解り、
    使用されなくなっています。
    マッサージも皮膚のずれや摩擦
    の原因となるため実施されなくなっています。

    ●様々な商品が開発されている
    体位交換の補助具や圧力を分散
    させる寝具類など介護者にも
    安心で便利な商品が多くなっています。

    ◆メモ◇~~~~~
    「褥瘡」と「褥創」どちらが正しい使い方? 
    日本褥瘡学会では「瘡」の字を
    用いることとしています。
    医学の領域では以前からヤマイ
    ダレの「瘡」が使用されていたようです。
    看護の領域では「創」を使用し
    ている人も多くいます。
    「瘡」を選択した利用としては
    ヤマイダレの持つ意味を重視しているようです。
    主に内部的な要因で引き起こさ
    れる壊死や痂皮などを「瘡」
    主に外傷(刃物などによる切り
    傷など)によるものを「創」。
    ◇◆◇◆~~~~~


    ◇参考文献
    書籍
    最新医学大辞典(医歯薬出版株式会社)

    インターネット
    日本褥瘡学会
    http://www.jspu.org/

    フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
    ja.wikipedia.org/wiki/褥瘡