気管切開を受けている方の在宅ケア


  • 気管切開:在宅ケア  項目一覧
    気管に関する解剖生理
    気管切開について
    気管切開のメリットとデメリット
    気管切開に伴う合併症
    気管カニューレについて
    気管カニューレの選択
    具体的なケア
    観察のポイント


  • 気管に関する解剖生理
    ◆気管の解剖生理
    ●気管とは?
    喉頭に続く空気の通り道で、
    左右の肺に分岐するまでの太い
    一本の管を気管といいます。

    ●気管の解剖
    食道の前方に位置しています。
    長さは約10cm
    直径は約2cm
    第4~6胸椎の高さで左右の
    気管支に分かれます。
    気管の外側は馬蹄形(U字、
    C字形)の軟骨(気管軟骨)が
    縦に連なって気管がつぶれない
    ように支えています。
    他にも、甲状軟骨、輪状軟骨
    輪状靭帯、平滑筋などで支えられています。

    気管の内壁は粘液を分泌する
    粘膜で覆われていいます。
    気管粘膜の表面には線毛細胞
    (線毛を有する上皮細胞)が存在しています。

    ●気管の主な役割
    ・鼻腔又は口腔から入ってきた
     空気を肺に送るためのパイプ
    ・線毛上皮細胞の働きで埃や
     微生物等の異物を気道の上部
     まで移動させる
    ・粘液の働きで気管内の乾燥を
     防ぎ、入ってきた空気に適度
     な湿気や温度を与える など

    ●気管周辺の大まかな解剖
    上から、舌骨、甲状軟骨、
    輪状軟骨、気管軟骨(約20個)
    胸骨上部。
    気管は第5胸椎のあたりの高さ
    で左右の肺に分岐(左右の主気管支)。
    気管の前方に甲状腺。
    気管の後方には食道。

    ◆メモ◇~~~~~
    甲状軟骨
    甲状軟骨は喉頭を支える大きな軟骨。
    喉頭の前面と両側面を覆う。
    甲状軟骨の突起部を喉頭隆起(のどぼとけ)。
    甲状軟骨の内側に声門がある。

    輪状軟骨    
    輪状軟骨は甲状軟骨の下方に
    あり喉頭の下部を覆う喉頭軟骨
    甲状軟骨と輪状軟骨の間に輪状甲状間膜がある。

    気管軟骨(輪)
    気管軟骨(輪)は輪状軟骨の
    下方に約20個あり馬蹄形で
    気管の前面と両側面を覆っている。
    輪状靱帯で軟骨と軟骨の間を結んでいる。
    気管切開する部位は、
    第2~第4気管軟骨。
    緊急時には甲状軟骨と輪状軟骨の
    間を穿刺又は切開 する場合もあります。
    ◇◆◇◆~~~~~



  • 気管切開について
    ◆気管切開とは?
    気道を確保するために必要な処置の一つです。
    気管に穴を開け(気管切開)て気道を開く方法です。
    通常は第2~第4気管軟骨を
    切開して気管カニューレを挿入
    して気道を確保します。
    気管カニューレを通して呼吸と
    痰などの分泌物を吸引又は喀出することになります。


    ◆気管切開の種類
    気管切開には外科的気管切開と
    経皮的気管切開があります。
    最近では侵襲性のより低い、
    経皮的気管切開が行われてきているようです。

    気管内へのアクセスの方法には、
    緊急時の気道確保や痰等の吸引
    目的で実施される輪状甲状間膜
    切開、輪状甲状間膜穿刺もあります。


    ◆気管切開の必要性
    呼吸困難又は呼吸不全の場合は
    自力での換気がスムーズに実施
    できなくなる為、医療機器の
    使用や酸素吸入、投薬などの
    処置が必要になります。

    呼吸困難などには気道の閉塞や
    狭窄、損傷、肺疾患、呼吸中枢
    の異常など様々な原因があります。
    上気道が腫瘍、浮腫、損傷
    麻痺、異物等による狭窄又は
    閉塞している場合は気管切開が必要になります。
    慢性閉塞性肺疾患、呼吸筋の
    麻痺、呼吸中枢の抑制など人工
    呼吸器を長期間必要とする呼吸
    不全の場合も気管切開が必要になります。
    その他には頸部手術等で気管
    内挿管が出来ない場合や意識
    レベルの低下による痰等の喀出
    困難、体力低下(衰弱)などで
    自力で痰などの喀出困難が長期
    に続く、誤嚥や嚥下困難が長期
    に続く場合などがあります。

    気管切開は安定的な気道確保の
    最後の手段として実施されます。


    ◆緊急時の場合の気道確保
    医療機関で緊急時に気道を確保
    する方法の最初に選択される
    処置は、通常は気管内挿管になります。
    気管内へのアクセス方法で、
    より速やかに安全に処置できる
    のは経鼻や経口からの挿管になります。

    気管内挿管が間に合わない緊急
    性が極めて高い場合は輪状甲状
    間膜切開又は穿刺(ミニトラック
    などの挿入など)により一時的に
    気道を確保する場合もあります。
    通常の気管切開より切開
    (穿刺)孔が小さいため換気や
    痰などの吸引が不十分なことが
    多いため、呼吸状態が改善され
    ないようであれば最終的には気管切開に移行します。


    ◆緊急時に気管内挿管が出来ない場合
    炎症や浮腫、血液や痰の塊り
    腫瘍、異物などで上気道に狭窄
    や閉塞がある場合は経鼻及び経口挿管は出来ません。
    緊急性が極めて高い場合は、
    輪状甲状間膜切開(又は穿刺)
    を実施し、一時的に気道を確保
    しその後、気管切開を実施します。
    緊急性が低い場合は、最初から気管切開を実施。

    ◆メモ◇~~~~~
    気道確保について
    呼吸困難には気道の閉塞や狭窄
    損傷、肺疾患、呼吸中枢の異常
    など様々な原因がありますが、
    換気がスムーズに出来るように
    するには空気の通り道(気道)
    をきちんと開いておくことが必要になります。
    呼息と吸息が出来る様に気道を
    開いておくことを気道の確保といいます。
    気道確保の方法には医療機器を
    使用する場合としない場合があります。
    医療機器を使用する場合の気道
    確保にはエアウェイの挿入、
    気管内挿管、輪状甲状間膜穿刺
    輪状甲状間膜切開、気管切開等があります。
    医療機器を使用しない場合は、
    頭部後屈あご先挙上法、下顎挙
    上法などがあります。
    一般的には医療機器を使用しな
    い緊急時(心肺蘇生時)に実施
    される処置を気道確保と呼んで
    る場合が多いと思います。
    気管切開を実施する前に通常は
    エアウエイや気管内挿管などで
    様子を見るケースが多いです。
    気管内挿管後、数日~1週間ほど
    様子をみても改善されない様で
    あれば、気道確保の最期の手段
    として気管切開が実施されます。
    ◇◆◇◆~~~~~



  • 気管切開のメリットとデメリット
    ◆気管切開のメリット
    ●気管内の分泌物を容易にとり除くことが出来る
    自力で痰の喀出が困難又は出来
    ない時にはすぐに痰を吸引して
    取り除くことが出来ます。

    ●緊急時の呼吸管理が迅速に出来る
    例えば、自発呼吸が困難にな
    った時、すぐに人工呼吸器に
    装着することが可能になります。

    ●その他
    *経口や経鼻からの挿管との比較
    管が短い
    管が短いと以下のようなメリットがあります。
    ・痰などが詰まり難い
    ・不潔になり難い
    ・閉塞し難い
    ・事故抜去し難い
    など。

    管理が容易
    カニューレの挿入や固定がし易
    く、痰などの吸引がやりやすい
    など。

    発声や飲食が可能
    経口や経鼻からの気道確保の
    場合は発声や飲食が出来ません
    気管切開の場合は気管カニュー
    レの種類などにより発声や飲食が可能になります。

    負担の軽減
    口や鼻から管が挿入されている
    と患者さん自身の負担は大きくなります。

    口腔内の清潔保持がより可能になる
    経口や経鼻の気道確保に比べ
    口腔内のケアが容易に出来る為
    清潔を保持でき、口腔内疾患や
    肺炎などの感染症へのリスクも
    より小さくなります。
    など。


    ◆気管切開のデメリット
    ●気管を切開することへの不安
    気管切開に限らず体に傷をつけ
    ることへの不安感はでてきます
    気管切開時の合併症やその後の
    管理など様々な不安材料もあります。

    ●発声が出来ない
    呼吸状態が落ち着いたとしても
    自分の意思表示が思うように
    伝わらないと大きなストレスになります。
    気管カニューレの種類などにより
    発声が可能なものもありますが、
    訓練を必要とします。

    ●誤嚥の危険がある
    カフつきのカニューレを挿入し
    ていても、肺への流入を完全に防ぐことは出来ません。
    カフの上部に溜まった分泌物は
    カフと気管壁の隙間を通って肺へ流れていきます。

    ●飲食が困難
    気管カニューレを挿入している
    と、種類により程度の差はあり
    ますが嚥下がし難くなります。
    飲食が可能になるまでは適切な
    気管カニューレで嚥下訓練をする必要があります。
    誤嚥の回数が多い時は見合わせます。

    など。



  • 気管切開に伴う合併症
    気管切開に伴う合併症には様々なものがあります。
    気管切開の術中や気管切開後の
    早期、晩期にそれぞれ起こりやすい合併症があります。
    介護職員等の場合は比較的安定
    した晩期にケアすることが殆どだと思います。
    ここでは気管切開の晩期に起こり
    やすい主な合併症をまとめてみました。

    ◆気管切開後晩期の主な合併症など
    ●気道粘膜の損傷、出血
    咳や体動などで気管カニューレ
    がずれたりした場合はカニュー
    レの先端が気管壁に接触する危険があります。
    接触している期間が長いと血管
    が傷ついて出血する可能性があります。
    特に気管内吸引の時には注意が必要です。
    吸引時は必ず出血の有無を確かめます。
    又、気管カニューレの先にある
    カフが硬い(空気の入れすぎ)と
    粘膜を損傷するリスクが高くなります。
    圧迫が長期間続いた場合は、
    気管壁が壊死を起こす危険もあります。
    気管食道瘻や気管腕頭動脈瘻を
    形成するリスクが高くなります。

    気管切開の晩期で最も重篤な合併
    症は気管腕頭動脈瘻と言われています。
    腕頭動脈が気管の前を斜めに走行しているためです。

    ●気管狭窄・閉塞
    乾燥した分泌物や出血、肉芽
    不適切なカニューレの固定などが原因。

    ●事故抜去(自然抜去、自己抜去)
    固定が不十分だったり、カフが
    柔らかすぎると抜けたり、ずれ
    たりする危険があります。
    カニューレが抜けると気道閉鎖
    気道狭窄などで呼吸困難を引き
    起こすリスクが高くなります。
    位置がずれるとカニューレの
    先端が気管壁を傷つけるおそれがあります。
    特に体位交換などの時はリスクが高くなります。

    ●その他
    肉芽の形成(気管内、気管切開孔)
    気管腕頭動脈瘻、気管食道瘻、
    気管カニューレの抜去困難
    気管切開口の閉鎖困難、
    切開口の拡大、誤嚥など。

    特に重篤な合併症には気管腕頭
    動脈瘻と気管食道瘻があります。

    ◆メモ◇~~~~~
    気管切開後の晩期とは?
    目安は気管切開後、1週間後。

    気管切開中及び気管切開後早期の主な合併症など
    創部の出血、気管内への出血、
    低酸素血症、頸部皮下気腫、
    気胸、縦隔気腫、気管食道瘻
    動脈損傷、反回神経損傷、
    食道損傷、気管粘膜の損傷
    創部からの感染、肺炎、
    自然抜去、閉塞など。

    反回神経損傷
    反回神経が損傷すると発声困難
    嗄声、誤嚥、呼吸困難などの症状がでます。

    気管食道瘻
    気管に穴が開いて食道まで貫通
    し、瘻孔が形成された状態。
    併発すると肺炎、呼吸困難などを伴う。
    気管内吸引時に血液や胃の内容
    物、食物残渣等いつもと異なる
    物が吸引されていないか観察が必要。

    気管腕頭動脈瘻
    気管食道瘻と同様に瘻孔が形成された状態。
    併発すると失血死の確率が高い。
    腕頭動脈が気管の前を斜めに
    走行しているため、カニューレ
    先端の接触やカフによる圧迫等
    で気管壁が損傷した場合に併発しやすい。
    下位気管部の切開で起こり易い
    症状が急激に悪化する場合も多
    いため、急変時の場合は吸引時
    の血液混入の有無を確認する。
    ◇◆◇◆~~~~~



  • 気管カニューレについて
    ◆気管カニューレとは?
    気管カニューレは気管切開時に
    切開孔から挿入される管です。
    気管カニューレを挿入して気道を確実に確保します。
    呼吸の維持、気道閉塞の予防、
    分泌物の吸引などを目的として挿入されます。


    ◆気管カニューレの種類
    気管カニューレにはいろいろな種類があります。
    大別すると、単管(一重管)、
    複管(二重管)、カフなし、
    カフありのタイプがあります。
    さらに、カフの上部に貯留した
    分泌物などを吸引する為の管
    (サイドチューブなど)が付いた
    カニューレや側孔のあるカニューレもあります。
    病態や用途に合ったカニューレ
    を選択することになります。
    一般的にはカフつきのカニュー
    レが使用されるケースが多いです。
    特に人工呼吸器を装着している
    場合はカフつきのカニューレを使用します。

    気管カニューレの材質には、
    非金属製(シリコン製等)と金属
    製のカニューレがあります。
    非金属製の気管カニューレが主流です。
    カニューレ交換時は非金属製の
    気管カニューレは使い捨て(ディ
    スポ)が基本になります。
    在宅では再利用するケースが多いです。
    金属製のものより手間がかからず
    感染のリスクもより低いなどの利点があります。
    又様々な種類があり、患者さんに
    より適したカニューレを選択することができます。

    金属製のカニューレは劣化し難
    く、繰り返し利用することが出来ます。
    気管切開が長期間必要な場合は
    金属製のカニューレの方が経済
    的な面では利点があります。
    欠点としては、非金属製のもの
    より硬い為、切開口や気管粘膜
    への刺激が大きく損傷のリスクが高くなります。
    消毒薬も限られています。
    カニューレの種類が少なく、
    金属アレルギーがある人には注意が必要です。


    ◆気管カニューレの構造
    ここでは単管でカフ付きの一般的
    な気管カニューレについてまとめています。
    メーカーにより各部の名称は異なる場合もあります。

    ●構造(各部の名称)
    チューブ本体(カニューレ)
    コネクタ
    ネックプレート
     ネックフランジ、ウィング、フレームなど
    固定孔
    カフ
    パイロットバルーン
     インジケーターカフなど
    インフレーションライン
     カフチューブ、インフレーションチューブなど
    一方弁
     ルアーバルブ、シールバルブなど
    X線不透過ライン
    など

    上記以外に固定用のテープや
    ホルダー、ネックバンドなどが必要になります。


    ◆気管カニューレの各部の役割
    ●チューブ本体
    気管の役割、空気の通り道

    ●コネクタ
    人工呼吸器やマスクなどの接続
    部分、吸引をする時の出入り口

    ●ネックプレート
    カニューレ本体を固定する

    ●固定孔
    固定用のテープなどを通す孔

    ●カフ
    エアーリークや誤嚥などの予防

    ●パイロットバルーン
    カフの状態を把握

    ●インフレーションライン
    カフ内に空気を送るための管
    パイロットバルーンとカフをつなぐ管

    ●一方弁
    カフ内の空気が漏れないようにする為の弁

    ●X線不透過ライン
    挿入位置の確認


    ◆その他の機能
    ●吸引機能の付いている気管カニューレ
    吸引ライン(サクションライン)
    とカフの上部に吸引口が付いています。

    ●窓(側孔)がついているカニューレ
    発声練習やウィーニング(離脱)の時に役立ちます。



  • 気管カニューレの選択
    ◆種類の選択
    ●一般的なカフありの気管カニューレ
    痰が多い、嚥下困難、誤嚥、
    人工呼吸器装着などの場合。
    誤嚥の量が多い場合や長期人工
    呼吸器管理時には吸引ライン
    (サクションライン等)付きの
    カニューレが使用されています。

    ●一般的なカフなしの気管カニューレ
    嚥下機能に障害がなく誤嚥の
    リスクが低い場合に使用。
    小児に使用されるケースが多いです。

    ●単管(一重管)
    痰の量が多くなく閉塞のリスクが低い場合に使用。

    ●複管(二重管)
    痰の量が多く頻繁に閉塞する場合などに使用。

    ●スピーチカニューレ
    嚥下が良好。
    発声訓練及び発声が可能。
    カフあり、カフなしがあります。
    単管、複管があります。

    ☆スピーチカニューレの構造
    空気が声帯に伝わるようにカニ
    ューレに側孔があります。
    カニューレのコネクタ部分に
    バルブ(一方弁)を取り付けます。
    バルブを通して呼吸をします。
    バルブは一方弁になっている為
    吸気は通しますが呼気は通しません。
    カニューレの側孔から抜けていきます。
    側孔から抜けた呼気は声帯に
    伝わり、発声が可能になります。

    ●レティナカニューレ
    気管切開孔の開存を維持する
    必要がある場合に使用されます。
    使用できる条件としては病状が
    安定している、自力で呼吸が
    出来る、自力で痰喀出が出来る
    誤嚥がない、嚥下良好、呼吸
    訓練、発声訓練及び発声が可能などがあります。

    ☆レティナカニューレの構造と使用方法
    気管カニューレの中で長さが
    一番短く、カフはありません。
    気管内に入るレティナ本体の先
    (内部フランジ・翼状)を気管
    前壁にあてて固定します。 
    発声訓練をする時は、一方弁の
    ついたバルブ(ワンウェイバルブ
    等)を本体にか取り付けます。
    呼吸訓練をする時は、完全に
    塞ぐために弁のないキャップ
    (エアウェイキャップなど)を使用します。

    鼻又は口から呼吸が出来る場合
    は弁のないキャップを使用します。
    出来ない場合は一方弁のついた
    バルブを使用することで、吸気
    だけバルブから入り、呼気は
    声帯を通って口又は鼻から抜けます。

    同じ構造の気管カニューレでも様々な種類があります。
    例えばカフ付きのカニューレの
    場合はカフの大きさ、形、素材
    厚さなども様々です。
    二重管のカニューレの場合は、
    スピーチカニューレと同じような
    機能(発声練習や呼吸訓練が可能)をもつ種類もあります。


    ◆サイズの選択
    適正サイズは気管径や身長、性別などで選択されます。
    メーカーや種類などによりサイズの分類は異なります。
    カニューレ本体の内径、外径、
    長さ、カフの外径などで分類されています。
    カニューレ本体の内径(ID)で
    表示されている製品が多いようです。  



  • 具体的なケア
    気管切開されている方には人工
    呼吸器が装着されていない方と
    装着されている方がいらっしゃいます。
    自力呼吸が可能で換気に問題の
    ない方と自力呼吸が出来ない又
    は弱く、十分な換気が出来ない方
    がいらっしゃいます。
    後者の場合は人工呼吸器を必要とします。
    今回は人工呼吸器を装着されて
    いない場合の注意点などをまとめてみました。

    ◆人工呼吸器が装着されていない(自力呼吸が可能)場合の注意点など
    ●気管カニューレの狭窄、閉塞の防止
    気管カニューレが塞がれない様
    にすることが最も重要なことです。
    気管カニューレの閉塞の原因
    には痰などの分泌物、異物の
    混入、肉芽の形成、カニューレ
    の入口(開口部)の閉鎖などがあります。

    ●出血の有無
    出血の量が多い場合は重篤な
    合併症が隠されている場合もあります。

    ●気管カニューレの事故抜去の防止
    咳嗽時、吸引時、体動時などは特に注意が必要です。
    カニューレの固定が適切にされ
    ていないとカニューレの位置が
    ずれたり、抜けるリスクが高くなります。

    ●感染防止
    特に喀痰の吸引時は吸引カテー
    テルが不潔にならないように注意します。
    ガーゼ汚染時は消毒し、清潔なガーゼに交換します。
    口腔内の清潔保持も大切になります。
    誤嚥性肺炎の防止にはパイロッ
    トバルンの状態を確認します。
    いつもより柔らかい様であれば
    気管カニューレのカフ圧が低下
    していることになり不顕性誤嚥
    による肺炎のリスクが高くなります。

    ●気道の乾燥防止
    気道の乾燥は痰を硬くしたり
    感染のリスクを高めます。
    気管切開時は気道が乾燥し易い
    ため適度な温度と湿度を保てる
    ように人工鼻が使用されています。
    気管カニューレの種類によっては使用しない場合もあります
    人工鼻を使用しない場合は、
    吸入や加温加湿器などで気道を
    乾燥させないことが大切になります。

    ●意思疎通の確認
    発声が出来ない場合の意思疎通
    の方法を確認しておきます。

    ●気管カニューレの固定の確認
    カニューレを固定する紐などが
    きつすぎると顔面がむくんだり
    うっ血したりします。
    又、皮膚の損傷を伴うこともあります。
    反対に緩すぎると咳嗽や体動時
    などに位置がずれたり抜けたり
    するリスクがあります。

    対策としてはガーゼなどで保護
    したり、固定紐を変えたりして
    適切な固定をします。

    気管カニューレ内の喀痰吸引に
    関しては下記をご参照ください。
    気管カニューレからの吸引 
    *当サイト内

    気管切開に伴う合併症をよく
    理解した上での介護が大切になります。
    気管切開に伴う合併症については
    下記をご参照ください。
    気管切開に伴う合併症
    *当サイト内

    介護職員等の場合は異常の早期
    発見に努め、バイタルサインの
    数値の異常や患者さんの状態の
    変化、気管カニューレに関する
    異常などがある場合は早急に
    看護師などに報告することが大切になります。
    直接的な対策や処置、判断等は
    医師又は看護職員になります。

    ◆メモ◇~~~~~
    人工鼻について
    気管カニューレが挿入されて
    いると鼻腔や咽頭などを通さず
    直接気管内に空気が入ります。
    その為、気道が乾燥しやすくなります。
    乾燥すると痰が硬くなったり
    気道粘膜の浄化作用の低下等で
    気道の狭窄や閉塞、感染などの
    リスクが高くなります。
    適度な温度と湿度を保持し、
    埃などの混入を抑える役割が人工鼻です。
    人工鼻だけでは不十分な場合も
    ある為、加温加湿器などを使用
    して気道粘膜本来の機能を保てるようにします。
    人工呼吸器を使用している場合は
    人工鼻と加温加湿器の併用は避けます。
    ◇◆◇◆~~~~~



  • 観察のポイント
    ◆全身状態の観察のポイント
    ●他覚的症状の観察
    呼吸の回数、呼吸の深さ、
    喘鳴の有無、顔・口唇・爪の
    色の変化、体温の異常(中枢温と
    皮膚温)、脈拍の異常、喀痰の
    量や色の変化、痰の硬さ、
    発汗状態、手足の冷感の有無
    血圧の変化等のチェックが大切になります。

    ●自覚症状の観察
    呼吸苦、胸痛、背部痛、気分不快などの有無。


    ◆気管カニューレに関する観察ポイント
    ・気管カニューレ内からの出血
     の有無
    ・挿入部やカニューレの接触に
     よる気道の痛みの有無
    ・切開部のガーゼなどの汚染の
     有無(出血、浸出液など)
    ・気管カニューレの固定の状態
    (きつすぎたり、緩んでいないか)
    ・皮膚の異常(固定紐等の接触
     部分や気管カニューレ挿入部
     周辺の皮膚損傷の有無)
    ・気管カニューレのカフの状態
     (エアリークの有無)など


    ◆その他の観察など
    ●口腔内の清潔保持
    歯垢や舌苔などの有無。
    口臭の有無。

    ●人工鼻装着時
    人工鼻の汚染の有無
    痰の量や硬さの程度
    痰の量が多かったり硬いと閉塞の
    リスクが高まります。

    ●痰の性状
    血液が含まれていると閉塞のリスクが高まります。

    ●精神的な面
    発声が出来ない場合のストレスの程度。
    意思疎通の方法は適切か。

    ●環境整備
    部屋の湿度や温度は適切か。
    室内の埃やチリなどの状況など。
    対象者の方の常日頃の状態を把握
    しておくことがとても大切になります。
    その為には本人や家族からの情報収集は不可欠です。

    気管カニューレ内の喀痰吸引に関しては下記をご参照ください。
    気管カニューレからの吸引 
    *当サイト内

    気管切開に伴う合併症をよく理解
    した上での介護が大切になります。
    気管切開に伴う合併症については下記をご参照ください。
    気管切開に伴う合併症
    *当サイト内

    人工呼吸器を装着している場合は
    人工呼吸器についての知識や吸引
    の方法、上記以外の観察ポイント
    や注意しなければならない事など
    必要な知識や技術が追加されます。

    介護職員等の場合は、異常の早期
    発見に努めバイタルサインの数値
    の異常や患者さんの状態の変化、
    気管カニューレに関する異常等が
    ある場合は早急に看護師等に報告
    することが大切になります。
    直接的な対策や処置、判断等は
    医師又は看護職員になります。


◇参考文献 
書籍
「最新医学大辞典」p839 p279
「家庭医学大百科」 p322~p323
「ナースに必要な診断の知識と技術:フィジカルアセスメント」p38 p49
「続まんがで見る手術と処置」p36
「イラスト救急処置マニュアル」p2,p3 p3,p4
「最新基本手技AtoZ」p62
「人体生理学ノート」 p71~p75
「人工呼吸器マニュアル」p6

インターネット
厚生労働省HP
2.喀痰の吸引
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/
kaigosyokuin/dl/text_03.pdf

ウィキーペディアHP内
ja.wikipedia.org/wiki/呼吸器
ja.wikipedia.org/wiki/気管
ja.wikipedia.org/wiki/軟骨
ja.wikipedia.org/wiki/喉頭隆起