経鼻胃管栄養法の具体的なケア


  • 経鼻胃管栄養法の具体的なケア 項目一覧
    栄養剤を注入するまでの大まかな手順
    経腸栄養剤の注入時の観察と注意点など
    栄養剤注入終了後の手順・後片付け・記録・評価
    経鼻胃管栄養法の合併症と対策


  • 栄養剤を注入するまでの大まかな手順
    ここでは介護職員の方等が実施できる経鼻胃管栄養法の具体的な
    ケアをまとめています。
    個人によって病態は違います。又はその時によって状態は変化して
    いきますので、特定の個人についてのケアは、さらに細かくなります。
    ここでは一般的なケアの一例をまとめてあります。
    医療機関や施設、医師、看護師等により、治療方針や看護方針、
    手技、取り扱う医療機器など異なる場合もあります。
    一つの参考例としてご利用頂ければと思います。

    ◆栄養剤を注入するまでの大まかな手順一例
    ①手指の清潔
    経管栄養に限らずケアを実施する前は必ず手洗い等をすませ
    て清潔にしておきます。
    手指の清潔には石鹸と流水で洗う方法とウエルパスなどの
    速乾性擦式手指消毒剤を使用する場合があります。

    ②医師や看護師の指示の確認
    栄養剤の種類や量、速度、注意事項などを確認します。
    白湯の量も確認。

    ③体調などを確認
    消化器症状(腹痛や下痢、吐き気等)や発熱の有無、活気が
    あるかどうかなどの確認をします。

    ④必要物品の確認
    栄養剤、注入容器(注入用バッグ、経管ボトル)経管栄養セット
    注入容器を掛けるもの(点滴スタンドやフック等)、膿盆、
    カテーテルチップ型シリンジ、白湯など。
    必要物品の確認と同時に栄養剤と白湯の量と温度も確認します。

    ⑤体位を調整
    ○適切な体位に調節
    適切な体位とは上半身を拳上させた楽な姿勢になります。
    そのうえで本人の希望する体位も考慮します。

    ⑥鼻から挿入しているチューブの確認
    ○チューブが正しい位置に固定されているか確認
    ※ここが最も注意しなければならないところです。
    固定が外れかかっていたり位置が少しでもずれている様で
    あれば必ず看護師に連絡します。
    さらに口腔や咽頭を観察して管がまっすぐに挿入されているか確認します。
    たまにとぐろを巻いている状態になっていることもある為、注意が必要です。

    ○破損等の有無
    チューブが変色したり破損していないか確認します。

    ⑦栄養剤のセッティング
    ○栄養剤を注入容器にいれる
    注入容器を必要としない密封された栄養剤もあります。
    容器に注入する時は、必ずクレンメを完全に止めておきます。

    ○点滴スタンドなどに掛ける
    利用者の胃の位置から50cm程度の高さか、利用者の希望の高さに調節。
    クレンメの調節位置が同じ場合は、低すぎると注入時間が遅くなります
    高すぎると速度が速くなります。
    胃の位置より低いと胃の内容物が逆流します。

    ○栄養剤を満たす
    栄養剤を栄養セットのチューブの先まで満たして空気を抜いておきます

    ⑧ガス抜きをする
    接続する前に、胃内に溜まっているガスを抜きます。
    シリンジでゆっくり引いてみます。
    胃の内容物が引ける場合もあり管が確実に胃内に挿入されて
    いることの確認も出来ます。

    ⑨栄養セットのチューブと経鼻胃管の接続
    清潔保持に注意しながら接続します。

    ⑩注入開始
    滴下時間を再度確認します。
    クレンメをゆっくり緩めて調節します。
    滴下速度を再度確認します。



  • 経腸栄養剤の注入時の観察と注意点など
    ◆経腸栄養剤の注入時の観察ポイント
    心身の状態と滴下の状態を観察します。

    ●心身の状態
    注入開始後は最低でも5分間ほどは傍で観察します。
    観察するポイントは呼吸状態(息切れなど)、顔色(蒼白)
    冷汗、腹痛、吐気や嘔吐の有無等が主です。

    その時の状態や病態にもよると思いますが、安定した状態で
    あれば5分ほど、初めての方は、出来れば30分ほどは
    付き添って観察した方がいいと思います。
    又、終了まで、時々観察することが必要です。

    ●滴下の状態
    接続部位などから栄養剤が漏れていないか、滴下の速度は適切
    かなどです。


    ◆栄養剤注入時の注意点
    最も大切なことは胃管が胃内に留置されていることです。
    誤って気管内に挿入されていれば呼吸状態や顔色が急速に変化します。
    呼吸が速く浅くなります。同時に顔色が徐々に蒼白になり
    冷や汗が出てきます。
    症状の変化が速い場合は直ちに注入を中止します。

    意識がはっきりしている方で麻痺等なく、比較的体力のある
    方の場合は気管内に異物が入ると咳こんだりなどして反応が
    すぐ現れますが、意識の低下や麻痺、体力のない方等の場合は
    栄養剤が気管内に入っても、自覚症状が小さい又は無い場合もあります
    その為、外からの観察(他覚症状)が大切になります。

    胃内に挿入されていても呼吸状態の変化が現れることもあり
    ますが、症状としては比較的緩やかです。
    消化器症状として早期に出易いのは腹痛や嘔気・嘔吐です。

    症状が早期にでる場合もありますが、2~3時間後にでる場合もあります。
    栄養剤の種類等が変更になったり、空腹時間が長かった場合、
    初めて栄養剤を注入する場合等は特に注意が必要です。



  • 栄養剤注入終了後の手順・後片付け・記録・評価
    ここでは介護職員の方などが実施できる経鼻胃管栄養法の具体的な
    ケアをまとめています。
    個人によって病態は違います。又はその時によって状態は変化して
    いきますので特定の個人についてのケアはさらに細かくなります。
    ここでは一般的なケアの一例をまとめてあります。

    医療機関や施設、医師、看護師等により治療方針や看護方針、手技
    取り扱う医療機器など異なる場合もあります。
    一つの参考例としてご利用頂ければと思います。

    ◆栄養剤の注入終了後の手順 一例
    ①白湯を流す
    イリゲーターで栄養剤を注入している場合は、チューブ内に
    残っている栄養剤を胃内に送る為に続けて白湯を入れます。
    白湯を入れる時はクレンメを完全に閉じます。
    その後クレンメを開いて白湯を流します。

    *白湯を流さない場合
    容器内に栄養剤が完全になくなって、チューブ内に空気が
    入っている場合や密封された栄養剤を使用している場合は
    クレンメを開いた状態で容器又はチューブを少し高くして
    チューブ内に残っている栄養剤を経鼻胃管に送ります。
    ルート内の栄養剤が全て胃管に移動した時点でクレンメを完全に閉じます。

    ②クレンメを止める
    白湯を流し終わったらクレンメを止めます。

    ③シリンジに指示量の白湯を吸引する

    ④経鼻胃管から栄養剤のチューブを外す

    ⑤白湯の入ったシリンジを経鼻胃管に接続する

    ⑥白湯を注入する
    白湯を注入後、空気を注入する場合もあります。
    白湯でもチューブ内に長時間留まっていると細菌の温床になります。
    希釈した食酢を注入する場合もあるようです。

    *白湯を注入する目的
    ○胃管内を洗い流して清潔にし細菌などの繁殖を抑える
    ○胃管が詰らないようにする

    ⑦経鼻胃管の注入口にキャップをする

    ⑧胃管を固定する

    ⑨口の周りや口腔内を清潔にする

    ⑩上体を拳上させておく
    注入終了後は胃からの逆流を防ぐため30分から60分は安楽な
    姿勢で上体を拳上させておきます。

    注入後も異常はないか観察は続けます。
    食後2~3時間経過して症状が出る場合もあります。


    ◆後片付け
    胃管からはずした栄養チューブや注入容器、シリンジなど
    使用した物品は食器類と同じ取り扱い方法で洗浄します。
    破損しないように注意します。


    ◆記録・評価について
    ●記録の主な内容
    ヒヤリハットやアクシデントがあれば、まず担当看護師などに報告します。
    その後記録します。
    ○実施時間、栄養剤の種類や量などを記録
    ○注入中の状態
    ○注入終了後の対象者の状態 など

    ●評価ポイント
    注入の速さや温度は適切だったか。
    注入中の姿勢は適切だったか
    など。
    *対象者の方の意見を確認します。


  • 経鼻胃管栄養法の合併症と対策
    ここでは栄養剤の注入中及び胃管挿入中の合併症と対策を簡単に
    まとめてあります。

    ◆主な合併症
    主な合併症には、誤嚥性肺炎、悪心、嘔吐、腹部膨満、下痢
    チューブの圧迫による潰瘍、チューブ固定部の皮膚炎等があります。


    ◆対策
    ●誤嚥性肺炎
    管が確実に胃内に挿入されていることを確認します。
    注入中及び注入後少なくとも30分は上体を挙げたままにしておきます。
    痰の絡みがある場合は、タッピングやバイブレーション等で
    痰の喀出を充分に実施します。
    自力で喀出できない場合は吸引器で吸引します。

    ●悪心や嘔吐、腹部膨満、下痢
    栄養剤の温度調節、濃度の調節、注入速度を遅くする、
    場合によっては中止などの方法があります。
    又腹部膨満に対しては、腹部を温めることにより腸の動きを
    良くする方法もあります。
    合併症の主な原因とし液体の栄養剤によるものが多い為、
    半固形又はそれにより近い栄養剤を注入することで解決される
    場合も多いようです。

    ●管の圧迫による潰瘍
    可能な限り柔らかくて細い管を使用します。
    固定する位置は同じ部位ではなく、少しずつずらしていきます。

    ●皮膚炎
    固定するテープは刺激の少ないものを選びます。
    固定する部位の皮膚は可能であれば、毎日清潔にしておきます。
    テープもその都度、新しく貼りなおします。


    ◆その他のトラブルと対策
    チューブの閉塞、抜去など。

    ●チューブ閉塞の対策
    栄養剤の注入後に微温湯20ml~30mlシリンジで流します。
    微温湯を流した後(フラッシュ後)10%の食酢を注入して
    チューブ内を満たしておく方法もあります。

    ●事故抜去(自己抜去も含む)の対策
    固定をしっかりしておくと同時に注入後は管を軽くまとめて
    パジャマのポケットなど邪魔にならない所に置いておきます。

    他にもありますが、比較的多い合併症及びトラブルをまとめてみました。


    ◇参考文献
    書籍
    写真でわかる基礎看護技術1 インターメディカ
    医学大辞典
    家庭医学大百科
    広辞苑

    インターネット
    厚生労働省HP内
    介護職員等によるたんの吸引等の実施のための研修関係資料
    www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/
    shougaishahukushi/kaigosyokuin/
    http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/
    hukushi_kaigo/shougaishahukushi/kaigosyokuin/dl/manual_09.pdf

    4.経管栄養
    https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/
    hukushi_kaigo/shougaishahukushi/kaigosyokuin/dl/text_07.pdf

    ニュートリーHP内
    www.nutri.co.jp/dic/ch6-1/

    ウィキペディアHP内
    ja.wikipedia.org/wiki/経管栄養