経管(経腸)栄養法の必要性


  • 経管(経腸)栄養法の必要性 項目一覧
    経管(経腸)栄養法の必要性 概要
    経口摂取が困難又は出来ないケース
    経管(経腸)栄養法が選択されるケース
    経腸栄養法が困難又は出来ないケース
    経鼻胃管栄養法が困難又は出来ないケース
    胃瘻栄養法(PEG)が困難又は出来ないケース


  • 経管(経腸)栄養法の必要性 概要
    *ここでは経鼻胃管栄養法と胃瘻栄養法PEGについてまとめてあります。

    体内に栄養素が吸収されるまでには様々な器官が関連しあって
    絶妙なタイミングで消化吸収がなされています。
    食べ物を口から摂取することにより、様々な酵素やホルモン等
    が分泌されたり、大脳に働きかけたりして代謝が活発になります。
    経口摂取することにより、消化器本来の機能が維持されるだけ
    ではなく、脳神経系や循環器系、呼吸器系、免疫系統等
    にも良い影響を与えています。
    脳神経系の場合は、噛むことにより脳細胞が活発になるといわれています。
    循環器系の場合は、代謝が活発になることにより循環もよくなります。
    呼吸器系の場合は、口腔内の唾液の分泌が維持され清潔保持に
    つながり、肺炎等の感染症の防止にもつながります。
    又代謝が活発になる為、ガス交換も円滑になります。
    その為、可能なら出来るだけ口から摂取することが大切になります。
    ただ、経口摂取が困難又は出来ないケース、経口摂取が可能
    でも栄養が十分でない場合もあります。



  • 経口摂取が困難又は出来ないケース
    ・意識障害のある方
    ・嚥下や咀嚼が長期的に困難(神経や筋疾患、脳血管障害等)
    ・誤嚥を繰り返し肺炎や呼吸困難の危険が高い(高齢や認知症等)
    ・長期的な食欲不振(末期癌等)
    ・摂取拒否(認知症など)
    ・咽頭から胃の噴門にかけての狭窄(腫瘍や瘢痕など)
    ・術後の安静
    ・胃や腸管の安静(クローン病、潰瘍性大腸炎など) 
    ・吐血、下血
    ・急性期時の心身の安静が必要な時(急性心筋梗塞など)
    ・腸閉塞(イレウス)など 

    他にも様々なケースがあります。


  • 経管(経腸)栄養法が選択されるケース
    経口摂取が困難又は出来ないケースや経口摂取が可能でも
    栄養が不十分な状態が長期間続くようであれば、別の方法で
    栄養や水分を補給する必要があります。
    病態にもよりますが、最初に実施されるケースで多いのは末梢
    血管からの輸液になります。
    末梢静脈からの栄養補給を末梢静脈栄養法といいます。
    2週間ほど様子をみて、経口摂取が無理な場合や栄養が不十分な
    様であれば中心静脈栄養法か経管栄養法(経腸栄養)に切り替えます。経管栄養法で多く実施される方法は、病態にもよりますが、
    経鼻胃管栄養法と胃瘻栄養法(PEG)です。
    PEG(ペグ)とは胃瘻を造設する方法の一つで「経皮内視鏡的
    胃瘻造設術」のことです。

    病態や医師によって選択は違ってきますが、手技的により容易
    に実施できるのは、経鼻胃管栄養法になります。
    胃管の挿入は看護師にも出来ます。
    経鼻栄養がさらに長期間続く様であれば胃瘻を試みるケースもあります
    在宅や施設などで療養する場合は胃瘻を造設するケースも
    多くなってきているようです。

    *上記の経管栄養法が困難又は出来ないケースもあります。



  • 経腸栄養法が困難又は出来ないケース
    ・高度の消化吸収障害
    ・重度の下痢
    ・腸閉塞
    ・全身状態が悪化して、消化管を安静にしなければならない時
    ・本人又は家族の同意を得られない など

    経腸栄養には経口摂取も入ります。
    腸を通して栄養素などを体内に取り込む方法を経腸栄養法と言います。
    腸から吸収された栄養素等は静脈を通して肝臓に運ばれたり
    リンパ管を通って静脈に入ったりします。その為、消化吸収に
    高度の障害がある場合や消化管に閉塞等がある場合は体内に
    取り込まれなくなります。
    この場合は直接、静脈に栄養素などを注入することになります。
    静脈を通して栄養や水分などを補給する方法を、静脈栄養法と言います

    経腸栄養法を実施しても不十分な場合は、静脈栄養法で補うこともあります。
    予後が期待できない場合は、経腸栄養法は実施されないことが多い。



  • 経鼻胃管栄養法が困難又は出来ないケース
    経鼻胃管栄養法は文字通り管を鼻から挿入して鼻腔、咽頭、
    食道を通って胃内に管を留置して栄養などを補給する方法です。
    その為、通過する部位に悪性腫瘍などの病変があり刺激により
    出血の危険が高い場合は困難になります。
    咽頭の刺激で嘔吐が頻回に起こる場合なども困難になります。



  • 胃瘻栄養法(PEG)が困難又は出来ないケース
    PEG(ペグ・経皮内視鏡的胃瘻造設術)は口から内視鏡を胃に挿入
    して胃瘻を造設するため、内視鏡が挿入できない場合は実施できません
    又、胃と腹壁を癒着させて胃瘻を造る為、障害になるものがあると実施できません。

    ●具体的な症例
    内視鏡が挿入できないほどの狭窄などがある場合
    開口障害
    咽頭、喉頭、食道、胃の噴門部などの癌など

    胃と腹壁を密着できない場合
    多量の腹水
    肝臓や結腸など他の臓器の存在
    多量の皮下脂肪(極度の肥満)など

    胃の位置が上方にあり腹壁からの穿刺が困難なケース
    胃の部分切除後
    胃の位置異常
    胃軸捻転症 など

    その他
    出血傾向が強い
    胃切除後
    胃の病変(悪性腫瘍や潰瘍の急性期など)
    横隔膜ヘルニア
    術後の癒着
    全身状態の悪化
    敗血症 など

    PEGが困難又は出来ない場合は、別な方法で胃瘻を造設する場合もあります。
    PEG以外の胃瘻造設術には開腹胃瘻造設術、腹腔鏡的胃瘻造設術、
    透視下胃瘻造設術、超音波下胃瘻造設術などもあるようです。


    ◇参考文献
    書籍
    「PEG(胃瘻)栄養・適切な栄養管理を行うために」改訂版フジメディカル出版 p21 p22
    「胃瘻PEG合併症の看護と固形化栄養の実践」日総研 p16~p20

    インターネット
    厚労省サイト内
    4.経管栄養
    https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/
    shougaishahukushi/kaigosyokuin/dl/text_07.pdf

    ウィキペディアHP内
    ja.wikipedia.org/wiki/経管栄養

    ニュートリーHP内
    www.nutri.co.jp/dic/ch6-1/