咳とは?


医学用語では「咳嗽(ガイソウ)」
coughing cough

咳は気道クリアランスを維持する為に
重要な働きをしています。
気道に溜まった分泌物(痰など)や異物
などを体外へ出そうとする体の防御反応の一つです。
気道の線毛運動では除去できない時に、
咳をすることで、分泌物や異物等を除去
することが出来ます。

咳の原因によっては痰などを伴わない場合もあります。


●咳嗽のメカニズム 

咳嗽のメカニズムはまだ解明されていない
部分もあるようです。

気道に存在する咳受容体が刺激されると
主に迷走神経が興奮します。
その興奮が延髄の咳中枢に伝わります。
咳中枢から呼吸筋(横隔膜や肋間筋等)
や声帯に刺激が伝わり咳が起こります。
これを咳嗽反射といいます。
深い吸気が起こり、声門が閉鎖し、
呼気(呼息)筋の強い収縮と共に声門が
一気に開き、強い呼気となります。
瞬間的に強い呼気となって、痰等を気道
から排出します。
咳をすることで、気道内に高速の気流が
発生し、痰などが呼気とともに排出されます。

通常(安静時)の呼吸では呼息時は呼気筋は使われません。


気道への刺激以外でも咳は起こります。
迷走神経が分布している外耳道や食道
下部等でも刺激を受けると咳が出ることがあります。
逆流性食道炎の場合に咳の症状が出るのはこの為です。
又、ストレスによる心因性の咳等の場合
は、大脳皮質から咳中枢に刺激が伝わる
ことで咳がでることもある様です。
これらの咳は、痰を伴わない乾いた咳になります。

咳中枢が刺激を受けると、意思とは関係
なく咳嗽反射が起きます。
咳をしたくなる感じになります。
咳中枢が刺激されなくても、意識的に咳
をすることも出来ます。
健康な人であれば、気道に貯留した痰等
は意識して咳をすることで除去すること
が出来ますが、様々な病態などにより、
咳嗽が弱くなった場合は介助が必要になります。

咳の受容体
主な咳の受容体は喉頭、気管分岐部迄の
気道粘膜にある機械的受容体と、気管
分岐部から末梢の気管支、細気管支の
気道粘膜にある化学受容体とがあります
主に迷走神経領域に分布しているよう
ですが、三叉神経領域や舌咽神経領域の
刺激でも咳が誘発されることがある様です。
三叉神経領域である咽頭、鼻、外耳道の
刺激で起こる咳を、三叉神経性反射咳といいます。

咳嗽の消費カロリー
1回の咳で、2kcalのエネルギーが
消費されるといわれています。

気道クリアランス
気道クリアランスとは、気道内の異物や
痰などを排出する能力のこと。
気道には気管支や気管内に異物(埃や
細菌、ウィルスなど)や痰などの不要な
物が存在している場合は線毛運動により
それらを気道の上部へ移動させる働きがあります。
異物が小さい場合(細菌やウィルス等)
は粘液により異物をとりこんで粘液ごと
移動させます。
肺胞内の場合は、肺胞マクロファージ
(白血球の一つ)の働きで、異物を取り
込みます。異物をとりこんだマクロファ
ージは自身の運動で気管支末端まで移動
し、その後、線毛運動により気道の上部
に移動します。
咳ばらいや咳嗽反射も異物や痰等を排出
する為の重要な働きを担っています。

咳は反射だけでなく意識しても咳をすることは出来ます。


くしゃみ(くさめ)について
sneezing
鼻粘膜が刺激されることで引き起こされる現象。
異物などの侵入を防ぐための防御反応の一つ。
鼻や口から空気が勢いよく放出されます
鼻粘膜の炎症や異物の混入、寒気や刺激
性のガスなどの侵入により鼻粘膜が刺激
されると、くしゃみが誘発されます。
くしゃみのメカニズムは、三叉神経を介
して延髄にあるくしゃみ中枢に伝わると
されていますが、咳のメカニズムと同様
に完全には解明されていないようです。
三叉神経は外耳道にも分布していますの
で、耳かきなどで刺激を受けるとくしゃ
みが誘発されることもあります。
外耳道は迷走神経も分布しています。
迷走神経が刺激されると咳が誘発される場合もあります。

中枢気道と末梢気道
中枢気道とは、気管と直径が2mm以上
の気管支のこと。
末梢気道とは、直径が2mm未満の気管支のこと。

呼吸筋について
呼吸する為に使われる筋肉の総称。
収縮したり弛緩したりすることで、呼吸
が円滑に行われています。
吸息(吸気)の時と呼息(呼気)の時に
使われる筋肉は異なります。
通常の呼吸での吸息時は、横隔膜や外肋
間筋が収縮し、胸郭が拡張します。
胸郭の拡張時は、胸腔内の陰圧が増して
肺が膨らみ、空気が自然に肺に入ります
その後、横隔膜や外肋間筋の収縮が終わ
ると胸郭が小さくなると同時に肺も収縮
し呼息に移行します。
通常の呼吸で使われる呼吸筋は、吸息時
の横隔膜や外肋間筋になります。
呼息時は、胸郭や肺の自己の弾性により
収縮する為、呼吸筋は通常は使われません。
激しい運動の時や意識して強い呼吸運動
をする場合は、呼息時も筋肉を使います
この時は腹筋群や内肋間筋が使われます
咳嗽時も腹筋群や内肋間筋が使われます

呼吸補助筋
主に努力呼吸時に使われる筋肉のこと。
吸気(吸息)努力時に使われる筋肉は
胸鎖乳突筋、僧帽筋、斜角筋、
呼気(呼息)努力時に使われる筋肉は
内肋間筋、腹直筋、外腹斜筋、内腹斜筋
腹横筋が収縮します。

繊毛運動と線毛運動どちらが正しい
生物学では繊毛と線毛は区別されるよう
ですが、医学の分野では主に「線毛」の
漢字を使うようです。
ということで、繊毛細胞と線毛上皮細胞
(線毛細胞)、繊毛運動と線毛運動は
字が違うだけで意味は同じ、ということになります・・かね?
参考文献の専門書籍でも「線毛運動」と
書かれた本が多かったです。
線毛のほうが書きやすい、読みやすい
ということもあるんですかね??
ちなみに、線毛は細菌の表面にみられる
繊維状の構造体。
繊毛は動物などの身体を構成する細胞小
器官の一つで、遊泳に必要な推進力を生み出すもの。
生物学では繊毛運動が正しいようです。

続きはこちらです⇒ 咳の種類


開設日:2018/12/6


咳(咳嗽) 項目一覧




◇参考文献
書籍
「最新医学大辞典(医歯薬出版株式会社)」p179 p255 p308 p345 p476 p481 p540 p762 p789 p838 p1040
「家庭医学大百科(主婦の友社)」p325~328
「人工呼吸ケアのすべてがわかる本(照林社)」p134 p142 p263 p266
「写真でわかる基礎看護技術①看護技術を基礎から理解!(インターメディカ)」
「一歩先行く呼吸リハビリテーション(メディカ出版)」 p135 p212 p228
「フィジカルアセスメント ナースに必要な診断の知識と技術(医学書院)」p40~p41
「実践できる在宅看護技術ガイド(学研)」p162
「広辞苑 電子辞書」」

インターネット〉
「フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)」
https://ja.wikipedia.org/wiki/呼吸筋
https://ja.wikipedia.org/wiki/咳嗽
https://ja.wikipedia.org/wiki/くしゃみ
https://ja.wikipedia.org/wiki/線毛上皮細胞
https://ja.wikipedia.org/wiki/線毛
https://ja.wikipedia.org/wiki/繊毛
http://www.weblio.jp/content/繊毛細胞